2013年6月8日土曜日

「先用後利」〜富山の薬売りの歴史と精神〜

>>前の記事(富山の薬売りの由来は江戸城の事件から)のつづき

 富山の薬売りは「先用後利(せんようこうり)」というキャッチフレーズを掲げて、全国に広められました。

先用後利(せんようこうり)

 先用後利とは、薬を先に使ってもらい、代金は後でいい、という話。
 薬のセットをあらかじめ客に預けておいて、半年か1年後に再び訪ね、使った薬の代金だけをもらい、更に薬を追加するというものです。

富山の薬売り


 これは江戸時代当時としては画期的なシステムで、なにせ町民・農民たちは貧困で常備薬など持てる状況ではありませんし、医者が現代ほど多くいた訳でもありません。
 それを、必要な時に使って、後から使った分だけ支払えばいいというのですから、こんなにおいしい話はありません。

 ただ、売る立場からすると、かなり不安な面もあります。預けた薬を持って夜逃げされるようなことも、きっとあったことでしょう。薬商と客の間の信頼関係が無いと成り立たない商売とも言えます。


 しかし、「医療の仁恵に浴びせざる寒村僻地にまで広く救療の志を貫通せよ」という富山藩主・前田正甫の精神は生き続けます。
 更には、富山は「真宗王国」と言われるほど浄土真宗が熱心な地域です。貧困であえぐ庶民に薬を届け健康を維持し、尊い命を守ることが、仏教の教えにも通じたのでしょう。

 幾多の困難を乗り越え、全国各地を黙々と歩き続ける回商・越中売薬は、まさに富山人だからこそできた事業なのかもしれません。

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